それは詐欺でしょうか?



新聞の片隅には片時も消えることのない、詐欺行為を伝える記事を見ることができます。
以前ならオレオレ詐欺、投資系の詐欺、今なら駆け込みで地デジ化詐欺等、時代とともにそのその手間手管は変化を続けてまいりました。

よく聞く話が「自分はひっかからない」と豪語している人ほど、いざって時は詐欺という行為かどうかを疑わずに引っかかってしまうなんてことも。

それほど身近なものではない分、目の前にしたときには相当な動揺があるのだと思います。


そんな詐欺行為?が、最近ごく身近なとろこでも発生したのでした。



今回は妻A氏の母についてのお話です。

義母は50代で、人の良さそうな顔にふくよかな体型です。見た目からすれば、いかにもカモになりやすそうなタイプです。


先日、義母が近所のホームセンターで買い物をした帰り道のこと。





その日は趣味のガーデニングの道具等が入った大きな袋を持って駐車してある車の元へと歩いていました。







荷物を積み込み、車をバックで出そうとしたその瞬間。

ポコン、という軽い音が車両の後部からしたのでした。

  



昼間のホームセンターという場所柄、多数のお客さんが行きかっており、後方の安全確認なんざ当たり前のようにしていました。
にも関わらず、さっきまで誰もいなかった空間、自車の斜め後方に一人のおじいさんが立ちすくんでいました。


自然発生的に湧いて出来てたかのようなおじいさん。一瞬、ホームセンターの妖精かと思いましたが、売り場を割り当てるとしたら堆肥売り場の妖精くらいしか残っていないような小汚い野球帽を被ったおじいさんでした。





もしかして、車と接触してしまったのかも!?

当然、接触事故の可能性を考え、義母は急いで車の後方に立ちすくむおじいさんのもとに駆け寄りました。





「・・・・あーあーあー・・・・」


パッと見、おじいさんに怪我をしている様子はなく義母はホッと安堵を覚えました。
がしかし、本当に面倒くさいのはここから。









おじいさんは、義母が目の前に来たことを確認してから、「ちょっとこれを見てくれるかい?」とポケットからおもむろにハンカチを取出しました。




ハンカチの中にはフレームの曲がったメガネがひとつ。

「・・・これ、3万円したんだよねぇ・・・」と聞いてもいないのにオープンプライス。




大丈夫ですか?と安否確認の言葉を遮るかのように、特に怪我をしている様子もないおじいさんはメガネの弁償について話を始めたのでした。
銀行に据え置きされている老眼鏡のような何の変哲もない普通のメガネ。物の価値はわかりませんが、到底そんな値段がするとは思えません。


「・・・あー、これ大事なメガネなんだよねぇ。」と目を細めながらメガネを見つめるおじいさん。



そんな大事なメガネをなぜハンカチに包んでポケットに入れるのか?ポケットから出す前からなぜメガネを壊れているのがわかったのか?突っ込む場所はたくさんありますが、自称被害者の方にそんなに強くものを言うことは普通の人にはできません。





本当に接触したのかどうかわかりませんが、人を疑うことを知らない義母はまずメガネよりおじいさんの体を心配し、救急車や警察を呼ぼうと提案しましたが、「いやいや、体は大丈夫だから、それよりこのメガネを何とかしないと・・・」と警察を入れるのを頑なに拒みます。


でも心配ですからと義母も食い下がりましたが、「忙しいし、3万円もらえれば自分で直す」との一点張り。

あとで弁償するからと、住所・氏名の交換をしようにも教えてくれません。






  



直すならホームセンター内にメガネ修理の請け負うところがあるから一緒に行きましょう!と店内に連れていこうとすると、「これは遠くの特別な店で作られたものだがら、そこらへんの店じゃ直せない!」と無理のある言い訳をひねり出してきました。このやろう、おフランス製か!?



オレであれば、「どこの百均に連れていけばいいんだ」という言葉が喉元まで出かかるのでしょうが、義母は懇切丁寧に粘り強く話を続けていきました。





















そして、なかなか折れない義母に我慢できなくなったのか、おじいさんは「じゃぁ半額でいいよ」とキレ気味にクリアランスセールを展開。



  



当たり屋確定でしょう、これは。
う、胡散くせぇー!!ゲロ以下の匂いがプンプンするぜぇー!!「じゃぁ」って何だよ、「半額」って何だ。



しかし、義母の悪意ゼロの「警察・治療・賠償」の話に、いい加減イライラし始めたじいさんは閉店間際の勢いで価格を破壊し続けました。














義母がまさかの「半額」という単語が出てくるとは思わず、困惑していると畳み掛けるようにじいさんは言いました。







30%OFFで諭吉に。
誰にとってキリがいいんだ、一体。













言っている意味がわからず、義母は「え?一万円?」と目を白黒させていると、じいさんは代表のフォワード並みにするどく切れ込んできました。









数秒で樋口一葉に降格。
もう必死。じいさん必死。「必ず死ぬ」と書いて必死。














「はい?え?ご・・・五千円?」、あまりに急激な価格下落に戸惑いを隠せない義母にしびれを切らしたおじいさん。






有り金をよこせ、と本日最高の譲歩を見せました。










さすがに気持ち悪くなった義母は、「5千円でこの人を追い払えるなら」とバッグから財布を取り出しました。



でも、義母の財布の中には全部で3千円しかありません。
















半ば焼けクソ気味に義母のなけなしの3千円を引っ手繰ると、メガネを無造作にポケットに押し戻し、ホームセンターの中へと消えていきました。




当初の目的も何もあったもんじゃありません。3万円のメガネが3千円で直るのでしょうか。でも、ホームセンター内であれば、焼酎とビールとつまみを買ってもお釣りも返ってくるかもしれません。




















かくして、財布に小銭のみを残して家に帰ってきた義母は、お茶を淹れ、こんなことあったのよ、と人に話しながら「あぁ、あれが当たり屋だったのかぁ」と気づくほど、のんびりしている人でした。



「お母さん、あれかしら・・・カモられやすい雰囲気とか出してるのかしらねぇ・・・」と悲しそうな顔をした義母の口の横には大きなパンくずがついていました。




      






否定できませんでした。








おわり















ホームへもどる