モラル観察隊





皆さんはこんな感じのマークをご存知でしょうか?


     

   ※適当に書いたんでちょっと本物とは違います



人が車椅子に乗っているようなこのマークは、「国際シンボルマーク」と呼ばれています。店舗等の駐車場で入り口により近いところに設置されているあのマークです。

体が不自由な方であったり、妊婦さんだったりが優先的に使うべき場所でしょうが、仮に普通の人が駐車したところで法律的に何のお咎めがあるわけではありません。仮に満車だとすれば、路上駐車するよりコチラに停めた方がよろしい時もあるでしょう。


つまり、このマークは人のモラルによってのみ存在し得るものと思っても差し支えないでしょう。しかし、フツーの人であれば他が空いてるのにわざわざ停める人はいないはずですけど。












話は変わりますが、オレとA氏はかなりのヘビーローテーションでレンタルDVD店に行きます。


互いに好きなジャンルが違いますから、離れ離れで物色することが多いのですが、ある時に限っては行動をともにします。




  


それは、例のマークの上にそれっぽい車が駐車されている時です。


 ※「それっぽい」とは・・・

    ・ホイールがでかい
    ・シャコタンにしてある
    ・エアロパーツがついている
    ・窓にやたら濃いスモークが張られている
    ・窓にカーテンがついている
    


上記に3つ以上○がつく場合は、モラル観察隊が出場します。

 ※「モラル観察隊」とは・・・

    ・店内で駐車した張本人を見つけ出し観察する
     (たまに誤認逮捕をする)





というわけで、非常に歪んだ趣味とは自覚しておりますが、この日も何食わぬ顔で店内に当たりをつけて推測していきました。












   


そして、それっぽい容疑者をホラー映画コーナー付近で発見。


男は茶髪のギャル男、女はスラリと伸びた長い足が印象的な金髪ギャル。
大手生活雑貨店あたりに行くと見られるタイプのカップルと言えば、うっすらお分かりになりますでしょうか。



男は一本のDVDを陳列棚から取り上げると、興味深げにしげしげと眺めておりました。


男が手にしたDVDのタイトルは「口裂け女」。

ご存知の方も多いかと思いますが、外科手術の失敗が原因で口が耳まで裂けてしまった女性が、登下校時の小学生を呼びとめ、自分の容姿について問いかけてくるという怪談・都市伝説といったお話です。

1970年代から噂が噂を呼び、当時の小学生は登下校時に口裂け女対策に集団登下校をさせられたとか。


現在でも口裂け女を題材とした映画は多く、発展版みたいなもので「ひきこさん」なんてものもタイトル化されています。







「オレ、前にこれ見たんだけどさぁ、超こえーよ、コレ!」


男はそのタイトルを手に掴んだまま、金髪ギャルに対し、少し自慢げにそのあらすじを述べようとしていたのです。

滑り出しはその恐怖感を強調。そして、続けざまに・・・







      


「これがさぁ、ほらあの・・・伝説・・・あー・・・と、ほら!こういうの・・・何伝説っつったっけ?ほら、あれだよ!」


































    


都市伝説という言葉が出てこず、「伝説、伝説」繰り返し言ってます。

しげの秀一先生の「バリバリ伝説」か、岡田あ〜みん先生の「こいつら100%伝説」くらいのボケをかます前振りならともかく、リアルにわかっていない模様。









    

      「まぁいいや!」


いいのかよ!
結局、都市伝説という言葉はないがしろにされ、導入部へと話は移っていくようです。





「それでさぁ、何がこえーって・・・学校帰りの小学生んとこにさ!口裂け女が急にワッって右からさ!・・・あれ?左からだったけ?ん、右・・・?」






















    


口裂け女が左右どちらから襲撃したかで彼の思考はまたもや緊急停止した模様。


この際、左右の違いは恐怖感に影響しないことを彼にはっきり伝えたい、今はそんな気持ちでいっぱいです。そして、早く筋を説明しろ!



























    



「とにかく、超マジこえーんだよ!」























    




結局、男の話を要約しても「口裂け女はとても怖く、小学生を左右どちらかからか攻めてくる」という実態しか見えてきません。

当然、女も「ふーん」とくらいしか言えることはありませんでした。












よほど男の話が退屈だったのか、今度は女が別のタイトルを指差しながら話を始めました。


    



ちょっとタイトルが何だったのかはわかりませんが、事故を連想させるような映画のようです。

「あーしのさー、後輩でー原チャ2ケツしてて事故って大怪我したのがいてー、何かそれ思い出したわー」


つまり要約すると、後輩さんが原付で二人乗り中に“不運” ( ハードラック )と “踊” ( ダンス ) っちまったのを思い出しちまったわけですね。







すると、すぐさま男がその話に入ってきました。

    


「あー!それ知ってるわー!後ろに乗ってた子、可愛かったのになぁ・・・」




男が不運と踊っちまった張本人を知っているような口ぶりをすると、目ざとく女が問いただします。






    


「え?何?何で後輩が女ってわかったわけ?何で顔までわかんの?」







裏で何があったのかまでは推し量れませんが、男は少し焦った様子で口をどもらせながら言いました。














    

「・・・いや・・・ほら・・・新聞で見たから!」
























   


非常に失礼な突っ込みかとは思いますが、ここまでの流れではこれ以外に言い表しようがありません。

そもそも、原付2ケツの事故くらいじゃ新聞に顔写真でないし!女も女で「あっ、そーか」じゃねぇよ!」もうすげぇよ、こいつら。突っ込み疲れたよ。















しかし、息も切れ切れな我々の事などお構いなしに、別コーナーの棚に移動しながら男は間髪入れず言いました。




男の視線の先には克・亜樹先生の「ふたりエッチ」実写版がありました。















    


「へー・・・映画になってんだ、『ひとりエッチ』。」




























   


すげぇ惜しいけど、それって全く別物だからね!!










その後も『創世のアクエリオン』の「合体」部分をやたら押してきたりと見ごたえ十分なやりとりが繰り広げられたりしていたのですが、キリがないのでモラル観察隊の任を解き、自分らの目的物をレンタルして帰ることにしました。


   

いやー、今日のは濃かったわー、と二人とも少し上気した顔で店外へと移動。











もちろん、店舗の出入り口付近には例のマークがあり、その上には誰かしらが止めたそれっぽい車両がありますので、嫌でもその様子が目に入ってきてしまいます。

結局、モラル観察隊はあくまでお遊びですから、最後まで見届けるなんて面倒くさいことをわざわざすることはまずありません。ましてや、直に説教するわけでもありませんし。













しかし、期せずして今日この日は最後のメインディッシュまで平らげることに。


さっきまで観察していた男女が例のそれっぽい車に乗り込もうとする、その瞬間を目の当たりにしてしまいました。


    


しかも、男は咥えていたアイスの棒をプッと吐き出すと、それに一瞥をくれるでもなく排気ガスを垂れ流しながらその場を去っていきました。






現場に残されたのは、鼻をつく排気ガスの残り香と、道端に投げ出された噛み跡の残るアイスの棒、そして車内に溜め込んでいたであろうタバコの吸殻の山。




パーフェクト、それ以外に彼らを讃える言葉をオレは知りません。








おわり












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