2009年7月15日(水)の詩咽


嬬恋マラソン その1


ここ数年間、メンバーを変えながらも、ちょっと太っては走って、ちょっと太っては走って痩せての繰り返しをしてきました。

しかし、「走らにゃ生きていけん」というほどマラソンが好きなわけではない集団ですし、ただ走るだけではモチベーションが維持できません。

ということで2〜3ヶ月に一度は小さなマラソン大会等に出場しては、毎回玉砕。
終わった直後には、「あー・・・もっと練習しておけばなぁ・・・」とか、勝負事には「たら・れば」は禁物なのに、ほぼ全員がタラレバをフルコースで吐露しておりました。


そこで、それらのタラレバフルコースを払拭するためにも、部員の反対を押し切って距離を伸ばしたマラソン大会に申し込みを行ったのでした。


   


彼らは今まで「5km」というマラソン大会における最弱クラスの距離しか経験をしたことがなく、そのための練習も同じ距離を走るくらいしか行ってきませんでした。

今までは個人的に練習で10kmを目安に走ろうとしても、「5kmのレースにそんなに必要ないでしょ?」とか反論されボイコットされるのが常でしたが、今度ばっかりはそうも言ってられません。

後で辛い思いするのはあんたなんだよ!?と教育母さん的な説教とともに尻を叩きつつ、本番の日を迎えるのでした。





つづく












2009年7月21日(火)の詩咽

マラソン その2

最弱クラスの栽培マンランナー達を連れて、今回参加してきたのは群馬県の南西部に位置する嬬恋村キャベツマラソンです。


本来、マラソン大会などの長距離レースは夏場には不向きであり、開催される場合は高原や山間地で実施されることが多く、ご多分に漏れず、こちらのレースも標高1000m超の高原地帯にあります。
また、この地域では冬はウィンタースポーツ、夏にはその冷涼な気候を活かしての合宿地などによく利用されています。


まぁしかし、「高原のキャベツ畑の中で走ろうぜ!」というキャッチフレーズに釣られて集まったランナーの多いこと多いこと。


    

会場に辿り着くための道が一本しかないため、駐車場へ入るのに3km以上の渋滞が発生しておりました。ディズニーランドかよ。

みんな、そんなにキャベツが大好きか!?キャベッツっ子どもが!

なんとか受付時間ギリギリで会場入りすると、出店やら何やらで会場全体がお祭りのように楽しげな雰囲気に包まれており、本部の力の入れようが伝わってきました。開催からわずか二回目だってのに3千人以上集まるってんだから結構すごいと思いますよ、これって。



そんなお祭りムードに同調してか、オレの腹具合もカーニバル。
渋滞のイライラとか受付へのプレッシャーが影響したのか、どうにも腹具合がよくありません。あ、悪態つき過ぎたかしら?

       

こういう大人数の大会でのネックは確実にトイレに集中してきます。
おそらくマックス激混雑が予想され、こちらでも「ディズニーかよ!」と思わずにはいられないのだと思います。

しかし、パンツにウンコを付着させていては、レースでどんなに大記録を出しても無効にされてしまいそうです。我慢できなくもないのですが、万事を取ってトイレに並ぶことにしました。



レースまでの忙しい時間帯をこういったことに割くのは、今回パルコール嬬恋というスキー場の施設を使用しているため、トイレの数などは通常の大会と比較しても十分な数が用意されてるんじゃないかと予想されるためでした。








      
   

ディズニーかよ!(40分待ち)



つづく

















2009年7月22日(水)の詩咽

マラソン その3


通勤・通学前の朝の5分が大変貴重なように、レース直前の時間もウォーミングアップや靴の準備等、大変にかけがえのないものです。

しかし、その血のように貴重な時間帯の大多数をトイレットタイムに割いてしまい、気づけばスタート時間まで残り20分を切っておりました。

           

               【時間配分の円グラフ】


これから市民マラソンなどへ出場を考えている人は、会場入りする前に大ちゃんだけは済ませておくようにしましょう。






まだランニングすらしていないのに、ハァハァと息を切らしながらベースキャンプへ戻ると、メンバーたちが一汗かいたうえで出走準備をしていました。

初心者ほどアップを疎かにしがちなため、様子を見られなかったのが心残りでしたが、どうやらしっかりやっているようです。約1名を除いて。



        


ここで鼻くそをほじっている彼は、数年前からダイエット目的で練習に参加しており、一時は腹筋を0個→6個へ増やした努力の人だったのですが、いかんせん性格が悪く、あまり人の忠告を聞きません。
最近では、ドラクエをやるために練習をさぼりました。


仮にここでは「クズ石」と呼ぶことにしましょう。




おい、お前は何をやっているだ!?みんなと一緒にアップやれよ!

トイレに大半の時間を費やした人間が言うことではないかも知れませんが、監督兼コーチとして残り少ない時間を有効に使うように忠告するのも仕事の一つです。


すると、悪びれずにクズ石はこう言いました。

「オレクラスになるとアップとかいらないんですよ?10qも道のりがあるんだから、途中で体がちょうど温まりますよ、ハハッ」



オレクラスってどんなクラスなんだ!?と問うのも面倒臭い。
語尾に人を小馬鹿にした笑いをつける癖がある彼の言動はいつだって人を苛つかせます。



こんな奴、レース途中で宇宙人に攫われて、人体実験の末に足がもう2本増えた状態でゴールすればいいのに。


       


つづく
















2009年7月23日(木)の詩咽


マラソン その4


これ以上、クズ石のことに構っている時間はありません。彼との問答に時間を消費するくらいなら、裏返った靴下を元通りにするほうがよっぽど有意義です。

考えを切り替え、着替えを済ませ、スタート地点へ移動しました。もうウォーミングアップは諦めました。


ここで本当に助かったのが、スタート地点が目標タイム別に分けられている点でした。





これが普通のマラソン大会であると「早い者勝ち」となっていることが多く、この場合、早くにスタート地点へ入った人ほど先頭へ出られることになります。

しかも、こういったレースに出られる人はせっかちさんが多く、10分前にスタート地点に辿り着くようでは、それこそ中間〜最後尾からのスタートとなってしまうことも往々にしてあります。

このため、そこそこ走れる人にとっては、マラソン大会が「障害物競争」とならないよう、場所取りの時点よりレースが始まっていると言っても過言ではないのです。

ただ、途中でパンくい競争があるのなら、障害物競争でも悪い気しないかもしれないです。




我々の出場する10qの部は、一つ目の区切りに「45分以内が目標」というものから、15分区切りでスタート地点が設定されています。

今回の難コースを考えると、まともなタイムは期待できないので、オレとOくん(24歳期待のエース)の2人は、45分の立て札より少し前に位置し、他の3人は60分の位置まで下がっったようです。



オレとOくんの前には、少なくとも150人のランナーがまだかまだかと体操等をしながら待ちわびていました。これが本当なら強者が随分といることになりますよ?
例えば平坦のコースを10km40分で走れる人でも、+5分くらいは楽にかかってしまうでしょうし。逆算すれば30分台で走れるような人がゴロゴロいるということです。



そして、号砲とともにスタート。

コースの見取り図概略はこんな感じです。



とにかく辛いのは高低差で、往路は全部下り坂、復路は全部上り坂と言い切ってしまっても問題ないでしょう。

陸上青年だった時分に、箱根駅伝の登り・下りコース(5区と6区の部分)をちょっと走ったことがあるのですが、それとそう変わらないようなコースだったと思います。



つづく




















マラソン その5


往路の下り坂で気持ちよく勢いで下りきってしまうと、登りの脚力を使い切ってしまうことが容易に想像されるため、チームメイトには口酸っぱく「行きは抑えろ!」と伝えてありました。

がしかし、自分も含め周りのランナーは、「カーブ曲がりきれるの?」という勢いで下りコーナーへ突入していきます。坂が急すぎてまったく脚が止まらんのです。


1qほど走ると、先にスタートしていた5qの部のランナーが対向車線を折り返してくるのが見えました。


先頭のランナー達はともかく、中盤以降のランナーたちの死んだ魚のような目でゾロゾロと歩きながら行軍していきます。



さながらゾンビの行軍。

そんな行軍を、10qの部のランナー全員が未来の自分達の姿を見るかのように見つめながら、急な下り坂を走り続けること3q。

そろそろ対向車線にも人が見えなくなってきました。
通過タイムを見ると9分55秒。ちょっと早すぎます。

昔ならいざ知らず、今のオレには出来すぎたタイムでして、後半にだれる可能性がグッと増してきたことを感じました。



他の皆にも「膝に負担がかからないよう、坂に逆らわないようなフォームで下るように」とアドバイスはしておきましたが、口頭注意だけで実行できるほど容易ではないことは自分でも百も承知です。

事実、自分でも実践できずに「ベタッ!ベタッ!」と衝撃を吸収できない証拠の足音を立てております。足首の動きが固い証拠ですな。



 


このあたりから下りの辛さに耐えきれず、自分以上にペースを落としてくるランナーが続出しており、不安になるくらい順位がスルッスル上がっていきました。







そして、5qの折り返し地点。
時刻は午前11時近くになっており、空から容赦のない太陽光が降り注ぎます。高原とはいえ気温は30度に近くなっているでしょう。

タイムはほぼイーブンペースで16分50秒。


近辺は視界が開けたキャベツ畑の広がる高原の一本道であり、アップダウンもさほどではないのですが、もうすでに脚を使い切ったランナー達にはこれですら地獄のような苦しみを感じていることでしょう。
子供でなくともキャベツがトラウマになります。

 

折り返し地点の手前から自分の順位を数えてみますと、かなり差は開いているものの、前を走っている人間は8人ほどしかいませんでした。
10qの部は全体で800人くらいいるでしょうから、思った以上に好順位につけている模様です。



こうなるとチームメイトの様子も気になるところなので、対向車線を気にしながら走っていると、若手のエースOくんはそう離れていないところに着けています。


その後は少し距離を置いて、オレよりモミアゲがすごいNくん。
こちらに気づいてか、モミアゲを滴る汗で爽やかに光らせながら会釈をしてくれました。


そこからかなり開いて、余裕のなさそうなガリガリのSくん。

さらに後方にクズ石がおり、オレを見つけるとセンターラインに寄ってきて会釈をしていました。そんな余裕があるなら順位を上げろと。




そして、いよいよ地獄の上り坂に突入。

なんだこれ!?
全然進まない!走る仕草にマンガ的擬音をつけるとしたら「モッチラモッチラ」が適当なくらい進まない!




この頃には1q走るのに5分ちょっとかかっています。
前半の登りの順調さを考えると、見る影もないくらいペースが落ち込んでいき、後続からのランナーに抜かれ続けました。

「なんとかなるさ」と当初思っていた自分のケツを蹴り上げたい。

とにかく喉が渇き、当初給水はするつもりもなかったのに、今では情けないことに全ての給水ポイントで立ち止まるようにして水を飲んでおりました。



こうして、「実は後ろに走っているんじゃないか?」と錯覚するほどに脚が動かない状況に苛立ちを感じ始めた頃でした。

後方から来た50代くらいの熟年ランナーが並ぶと同時に「兄ちゃん!がんばれ!ついて来い!」と声をかけてくれたのでした。


あったけぇ!

ほとんど一人旅の寂しい状況でしたから、こういった声を掛けて貰えたのには助かりました。昨今、抜き様に屁をかけるような人間もおるでしょうに、良くできたお人がいたものです。



この後は、おっさんのケツに喰らいつくように走ったお陰で急激にペースを落とすことなくどうにかゴール。

タイムは43分くらいで約20位とまずまず奮闘できたのではないでしょうか。
ただ、ラスト5qで26分かかってしまったのには不満が残りますが・・・



改めて考えると、オレの当初スタート地点は45分のちょっと手前としていたわけですから、結果43分とほぼ想定どおりのところに陣取っていたことになります。

過小も過大もなく、自分の持てる力とコース形状を熟慮したうえでの結果と言えるでしょう。


・・・ということは、当初オレの前にいたランナーの内130人くらいは過大に自己評価をしての配置だったことがわかります・・・





130人抜くのに苦労したから。



※注意

本当にスタート地点は自分の力量にあった場所でないと、後方から押されて転倒するなどの危険性が孕みますのでご注意くださいね!





つづく











マラソン6 エピローグ


ラストは這うようにしてゴールした10km。
すでに気温は30度を超えていたでしょう。ゴールのアーチも熱気で歪んで見えます。


今回のレースを想定しての練習をしてこなかったこともあり、走り終えた直後から筋肉痛でピヨピヨ歩きしか出来ない状態になっていました。(ひたすら同距離である10kmを走る練習のほかは坂ダッシュくらいしかしてません)


その姿を見た知人が、「ゾンビみたいだけど大丈夫?」と声をかけてきましたが、その評価に間違いはないなと鏡を見る前から素直に思えました。

  

※このイラストが気に入ったので名刺のデザインに流用




給水所で水をもらい、紙コップを片手に一息をついていると、直に若手のOくんが周りの数人と数珠繋ぎににゴールラインへなだれ込んでくるのが見えました。

タイムは48分と、オレからは4〜5分離れたものの総合順位は約40位と奮戦した模様です。



このあたりから後続のランナーが次々にゴールへなだれ込んできました。

モミアゲ貴公子は51分。
慣れないレースに心なしか彼のモミアゲもぐったりしているように見えました。もし、モミアゲが人語を話せるとしたら、きっと自暴自棄気味に介錯を望んでいたことでしょう。

   




続いて、ガリガリくん57分。

このタイムでもまだ全体の4分の1もゴールしてないのですから、どれだけ難コースだったかが窺われます。
彼は高校まで陸上競技に携わっていたのですが、陸上未経験・喫煙者のモミアゲ貴公子に大差で負けたのが大層ショックだったようです。

しきりにその点をぼやいていましたが、マラソンは嘘をつきません。練習するしかないでしょう。



倒れこむようにゴールをする者、恋人の肩を借りて給水地点へ向かう者、それぞれが持てる限界の力を使い果たし、走り終えているのだということがありありとわかります。

「何でこんな辛い思いをしてまで走るんだ?」と思う方も多いでしょうが、どんなタイムであれ完走後のランナー達の充足した笑顔を見てもらえば、その理由の何分の一かは理解していただけるかもしれません。





そして、最後にクズ石が64分でフィニッシュ。
順位は全体で見れば真ん中くらいでしょうか。

すっごいいい顔してゴールしてましたが、ラストは歩いているカップルに抜かれての無様なゴールでした。

そこが非常に彼らしいと言えば彼らしいのですが。







そして、一番ダメな走りとエピソードを披露した彼が誰よりも早く言いました。

「また、来年もこの大会に出ましょうね!」

   


それをお前が言うか?と残りメンバーが思ったかどうかはわかりませんが、また近いうちに今回参加できなかったメンバーを引き連れ、何かしらのレースに参加してまいります。


おわり















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