ピーちゃん



先輩に鳥と猫を飼っている人がいます。

鳥と猫、焼き鳥とキャットフード、食うか食われるか、相容れない関係であることは明白です。

「ルーニー・テューンズ」の猫のシルベスターと小鳥のトゥイティーであれば、本来弱者である小鳥が性悪猫をさまざまな策略で翻弄させることもできるでしょう。しかし実際にはそうは行きません。


しかし、オレの心配をよそに先輩はそのどちらにも惜しみない愛を送り続け、一人と1匹と1羽での生活を楽しんでいました。


          




しかし、ある日のことです。

先輩は仕事を終え、いつものように鳥と猫の待つ我が家へと戻ってきました。
いつもなら「おかえり!」とでも言っているのかわかりませんが、小鳥のピーちゃんの鳴き声があるのですが、今日に限ってはまったく何も聞こえませんでした。

それもそのはず、鳥かごに目をやるとピーちゃんの姿がどこにもありません。


       



籠の入り口は開け放たれており、もしやと家中くまなく探しますが、どうにも見つかりません。


普通の人なら真っ先に考えつくのが「猫がピーちゃんを食った」という可能性なんですが、猫もこよなく愛する先輩はそういったことを一切考えません。



籠の鳥とは言え、ピーちゃんもいつか大空に羽ばたくのを夢見ていたはずです。きっと今頃は遠くの空を自由に飛び回っていることだろう・・・先輩はそう信じ、静かに籠の扉を閉めました。















「ニャー」





と、その時、どこからともなく先輩の猫が姿を現しました。


いくら人語が通じないとはいえ、庇をともにした仲間である猫にもピーちゃんの旅立ちについて話をしてやらねばなりません。


「お前(猫)にとっても辛いことかもしれんがよく聞けよ…」


猫を持ち上げながらそう言いかけた瞬間、先輩の時間が止まりました。










分かりやすいほどに結構毛だらけ猫羽だらけ。


「あぁ、そういえば口の周りに羽の生えた猫を飼っていたんだっけ!」と事実を曲解することも考えましたが、口元からハラリと落ちる鳥の羽を見てやはり真実として受け止めざるをえませんでした。


そうです。飼っていた猫はピーちゃんを食べてしまったのです。





翌日、出社してきた先輩はまるでリビングデッドのようでした。
その理由を問いただしたところ、こういった残念な結果を聞き及ぶこととなったのでした。


「本当に残念でしたね・・・」

そう先輩に声をかけると先輩は力なく「ありがとう」とつぶやくのみでした。

しかし、一番気になるのはその後の猫の行く末です。
いくら両方可愛がっていたといえ、片一方を食べてしまった猫を今までどおり愛せるのか、という一点がどうしても気になり、デリカシーに欠ける質問ですが思い切って聞いてみることにしました。



「今も普通に家にいるよ、猫」



よかった。可愛さあまって憎さ100倍的な行為に走られなくて本当によかった。

じゃぁ特に変わったことはないんですね!?と聞くと先輩は「ううん」と頭を振り、猫の名前を改名したことを告げました。






どうやら先輩は猫より鳥のほうが好きだったみたいです。

そして、先輩の中での真実は、「ピーちゃんは猫のお腹の中で今も生きている」という設定のようです。







おわり