「Tシャツの次」



皆さんも普段から来ているであろうTシャツ。

ヒッピー文化が花開いた昔は「Tシャツ=肌着」であり、それを着て外に出ることに当時の大人たちは眉をしかめていました。当時、Tシャツは若者を象徴的に表すアイテムであったといっても過言ではなかったのです。

しかし、時代は移り変わり、デザインやプリントにより様々に差別化されたTシャツが世間を賑わせ、Tシャツで外に出ることに抵抗を感じる人も少なくなりました。



ブランドショップが商業的に作るTシャツ、オレのように一個人が趣味で作るTシャツ、真っさらなキャンバスとして、そこにアートが刻まれたTシャツ、または広告看板としてその機能を果たすTシャツ。

作り手が考えるTシャツのスタイルも多種多様ですが、着る側の受け取り方も様々です。



そして、より肌に身近なためでしょうか、Tシャツ自体が記憶媒体のようにたくさんの思い出を秘めている場合があります。






あー、このTシャツが欲しくて東京まで行ったなぁ、とか。

  






あー、このTシャツ着ていろんなとこ行ったなぁ、とか。

  






あー、このTシャツの血のシミ、まだ残ってらぁ、とか。


   


 
幼少期からTシャツとともにあった我々の世代にとって、タンスの中身は思い出の宝庫です。ですから、タンスの整理は、写真アルバムの整理にも似て、同様にいちいち手が止まりはかどらないものです。


しかし、どんなに気に入ったものでも、着られなくなる時はやってきます。
ファッションスタイルの変換等が理由であればまだいいのですが、襟周りのヘタり等は長く着用していれば、どうしても避けられないことでしょう。


そんな状態になってしまっても、思い出を切り捨てるみたいでなかなか捨てられないといったような状況が続き、結果、整理が追いつかず、オレの部屋はTシャツだらけとなっております。










一体どうしたものか、と思い悩むある日のことでした。


いつものようにジャケットの下に古くなったTシャツを着込み、友人とお茶を飲んでいますと、一人の若者がふらりとやってきて、我々に話しかけてきました。

いや正確には友人に話しかけることが目的でした。

若者は服作りを生業とするために勉強中ということで、地元でファッションショー等を手がける友人にアドバイスを仰ぎに来たのでした。


どんなことを実際にしているのか?という友人の問いに若者は銀色に光るバッグから奇抜なTシャツを取り出し、そのデザインの成り立ちや製法、今後の希望の展開などを語りました。






マニアックすぎて3分の1もわからんかった。



美術的な専門用語やらも飛び出しており、直接話しかけられているわけでもないのに、何か無性に不安になってきました。そして眠気が眼を直撃しました。


オレが眠たそうにしているのを気遣ってか、友人は一度話を区切り、「半分しか言っていることがわからないよ」と若者を嗜めました。確かに友人がわからんのなら、オレにわかろうはずもありません。



友人が彼に言いたかったことは、服に思い入れやそこにプレミア感を出すための物語は確かに必要だけど、それがお客さんや服を売ってくれるお店の人に理解してもらえないものだったら、それは何の意味もないよ、ということでした。


そのTシャツが美術的な位置づけとして作られているなら、それでもいいのかもしれないけど、商業的に展開していきたいなら、そこの棲み分けはよく考えたほうがいいよ、と先人として友人は少し厳しく若者に伝えました。


普段は子どものようにはしゃぐ友人も、お仕事の話になるとやはり人が変わります。


若者はしょげた様子もなく、熱心にその話に聞き入ってました。

その話がいったん区切られると、臆面もなく「他にもこんなもんを作ってるんですよ!」とまたバックの中に手を突っ込みました。また説法をされるかしれんてのに。傷つくことも恐れず前のめり、若いっていいなぁ。



そう言ってバッグから取り出されたもの、それは一枚のパンツでした。
パンツといっても、男の最後の砦であるアンダーウェア的のものです。


「パ、パンツ?」


ノーパン党の人か露出癖のある人でなければ、確実に所有しているものですし、裾野も広い分野であることに違いはありません。しかし、「パンツ作ってます!」と言って、助言を求められても友人もコメントに窮することでしょう。



しかし、このパンツ。元をただせばTシャツだと言うではありませんか。







なぜ、それを先に出さんのだ!?




友人とオレの声が不意に同調し、少し寂しげな商店街の脇にあるカフェの店内に響きました。

パンツがTシャツになったんじゃ大変ですが、Tシャツがパンツになるなんて!こういうわかりやすいのを先に出してくれよ!オッサン、こういうネタじゃないと正直、体がついていかんのよ!







次回、実際にパンツを作ってもらいましたのでお披露目します


つづく