肥満児



群馬と言えば産湯が温泉、主食が温泉たまごなくらいの温泉王国でして、もうそこいら中に温泉がございます。

上記に一部嘘も混じってますが、どこかにちょっと出かけた際に「温泉でも寄っていくか」という軽い感覚で温泉郷に寄ることができるのは事実です。


さて、ちょっとした用を済ませ、友人とある温泉場に寄った際のお話です。



その温泉最大の見所は露天風呂からの眺望です。大きい谷のへりに露天風呂があるため、遮蔽物一切なしに山々を眺めることができるのです。


この日も湯煙に巻かれながらぬるめの風呂で長風呂していますと、目の前で同様に長風呂をしていた親子の会話が耳に入ってきました。






「お前も少し痩せなきゃなぁ。」


一見すると息子さんは年の頃なら小学3,4年、身長は普通ですが、体重は60sのオレより重そうで、野球ならキャッチャー、サッカーならキーパー、大好物はカツカレーといったような典型的な肥満児体型でした。


お父さんは続けます。

「まずはご飯を今の半分くらいには減らさないとな。」


すると「えー!」とご飯大好きそうな少年が不満の声を漏らします。こいつの茶碗はどんぶり飯に決定です。



「あとはお菓子だよ、お菓子はしばらく禁止。」



お父さんの口から、肥満児にとっては死刑宣告に等しいお菓子禁止令が発令されました。

「ええーー!」

先ほどより一際大きい不満の声が息子さんより上がりました。もうキミ、ニックネーム「どんぶり飯」で決定。

肥満児の生き甲斐であるお菓子。お菓子のためなら親をも殺す勢いで反論に転じますが、どれもお父さんを納得させるだけの材料はありません。

逆にお父さんは『お菓子が成長に与える阻害要因』を肥満児に説きだしました。


「お菓子は砂糖とかいっぱい使ってるだろ?今より太るし、虫歯も増えるぞ。」


本当は砂糖は体内に吸収されると無駄なくブドウ糖に変換される素晴らしい食材なので、糖分を摂取したからと言って余計に太るというわけではないんですけどね。
ただ、別腹ーとか言ってさらに食べるから余剰分だけ太るというのが事実です。
 
  


胃が4つある牛じゃあるまいし、別腹など存在しないのです。





しかし、そんなことで諭されては肥満児の名折れ。
口をとがらせながら反論します。







「じゃぁ、ポップコーンは!?」



それもお菓子だろ。

「バカ!甘くなければいいってもんじゃないんだよ。明らかにお菓子だろ。」


肥満児的発想に、油分を舐めるな!というお父さんの喝が入ります。いいぞ、お父さん。


実際、同量の糖質・脂質(油分)主体の食事をマウスに食べさせると、脂質主体の食事を摂取したマウスの方が太ったという結果があるそうです。

とすればポップコーンもアウトですよね。






しかし、息子さんは丸々太った血色の良い顔をさらに膨らませ、お父さんへ食いつきます。







 
「じゃぁ、キャラメルコーンは!?」



明らかにお菓子だし、明らかに甘いだろ、それは。
コーンつながりでどうにかなると思うなよ!


「バカッ!ポップコーンより太るだろ!」


お父さんとオレのツッコミがシンクロしました。



その後も、「肥満児におけるお菓子の定義」論が父と息子の間で交わされ、ぬるま湯に浸かりながらしばらくその喧噪に耳を傾けていました。


これから、息子の脳内にこびりついた脂肪分を取るのにお父さんは苦労することでしょう。


がんばれ、お父さん。がんばれ、肥満児。そう心の中で呟きながら湯気がもうもうと立つ露天風呂を後にしたのでした。






       完












追伸:肥満児が風呂上がりにアイス食ってました。