キャンパスライフ 第9話 



秋の夜長とはよくいったもので、日が短くなる秋、山の夜はあまりにも長すぎました。娯楽なんて何もない山の中です。暗くなってからやれることなんてそう多くはありません。


何もやることがないカービーに残された遊びは妄想と空想しかありません。しかし、その妄想も徐々に危うい方向へと向かっていきます。

「自分はここにいない、本当の自分は病院のベッドの上にいるんだ、そうこれは夢!早く目が覚めないかなぁ!ハハハ!!」

       


この頃にはこんなことばかり考えてばかりいたそうです。

現在の自分は植物人間で、長い夢として山暮らしをしている、そう思わないことにはやっていけなかったのかもしれません。あまりにも希望が乏しすぎて。



他にも、木に藁を巻いて無茶苦茶に殴り出したり、地球にマウントポジションくれてやると言わんばかりに地面を殴ったりと行動にも奇妙な点が目立ち始めました。

カービー曰く、そうすることによって自分のちっぽけさ、地球の雄大さを噛みしめていたそうです。わけわからん。


ここまで超人的な生活を続けてきたカービーですが、空腹や怪我といった生理的な現象よりもっとやっかない敵と向かい合わなければならなくなりました。



そう、それは「孤独」です。

もう誰でもいい、何でもいいから話したい!
毛穴という毛穴から哀愁を垂れ流している今なら恋のバラードを千曲くらい作曲できるかもしれません。

        

そのタイトルで売れるかどうかわかりませんけど。






そんなカービーの日課のひとつに「木登り」というものがあります。


別に木になっている食べ物をゲットとか、タンザニア奥地に生息するといわれている『珍獣カビヤマモドキ』の謎の習性とかでなく、高いところにいれば誰か見つかるかもしれない!もしくは誰かがオレを見つけてくれるかもしれない!…と思って登っていたそうです。

しかし、カービーの視力が野生の鷹なみの解像度を持っていたとしてしても、見えるものは木と草しかないんですけどね。

       


逆に異常でも何でも起きて、この寂しさを紛らわして欲しい・・・そう願うカービーでした。






さぁ、これを読んでる皆さんがドン引きしているところで、もっとドン引きする話を書きましょう。



実は、今回この話を書くきっかけとなった噂話の段階で

「カービーは寂しい夜、木を抱いて寝てやり過ごしたらしい」

というものがありました。


事の真偽はともかく、もうこの話だけで十分涙を誘えます。
そこでインタビューも佳境に入ったころ、オレはようやくこの話を切り出すことにしました。


で、実際にそうだったん?と聞くと、彼はそうじゃないと頭を振りながら否定しました。


そ、そうだよなぁ!
いくらなんでも木はないよなぁ!植物だもんなぁ、だって!
いくら寂しい夜だからって抱かないよなぁ、木なんて!




「毎日抱いて寝てたよ」と。



     


つまり、彼の否定にかかる部分は「木を抱いて寝た」という部分ではなく、「寂しい夜だけ抱いた」という部分だったんですね。うわぁ。






「寝るだけじゃなく、外に出る時も一緒だったよ」と。




   


号泣です、鬼泣です。
やめてやめて!これ以上、オレの涙の泉を溢れさせないで!


しかし、近年これほどまでに悲惨な若者の話があったでしょうか。

下界にいる友人たちは今頃楽しくやっているんだろうなぁ、と思うと、自分も何かしてないと気が狂いそうになるのです。

何より取り残されるのが怖くて、少しでも現代の若者として同じような何かの行動を取りたい。そうして、「オレだってこんなに楽しんでるんだぜ!」とこれ見よがしに石や木を連れて狩りに出かけていたそうなんです。

       


日によっては川に行ったり、山菜を採りに行ったり、少しずつ着実に石・木に情が芽生えます。いや、芽生えんなよ。


こんな生活も末期に達しますと、声にこそ出しませんが、石・木に中学校の時に好きだった女の子の名前をつけていたそうです。


以前、トム・ハンクスが遭難する映画がありましたが、そのときもトムはバレーボールに顔を書いて名前をつけて大事にしていたシーンがありました。人は人なくして生きていかれないのかなぁ、と考えさせられたシーンでした。

そんな現実がこの目の前にあるってのがまた信じられませんでした。


もう哀れすぎてかける言葉もありません。
取り残されるどころか、一般人の二歩も三歩も先んじていると思うのはオレだけでしょうか。




ちなみに木は階段を作る時に余った丸太で、石は河原で色っぽい形をした石を拾ってくるそうです。


      

しかし、石に関して言えば、ある意味浮気ですな。



つづく







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