キャンパスライフ 第8話 



猿との激闘が続くある朝のことでした。

さぁ、今日も食料探しがんばるぞーと家を出ると、木に繋いでいる犬に朝の挨拶へ向かいました。


オース!今日もがんばろうぜー!と軒先を見ると見たこともない犬が繋がれていました。前の犬と同じ茶色ですが、いかんせん顔が全然違います。




昨日までここにいたはずの犬はいったいどこにいったのでしょうか?
もしかしたら、ノザキさんが猿駆除の技術を身につけつつある犬の成長をやっかんで、勝手に犬トレードをしたのでは!?



その割りにはこの茶色の犬もカービーにやたら懐いているのです。うーん、こいつは以前誰かに飼われた犬なのかなぁ。見れば顔が間延びして結構ブサイクな犬です。「なんか小さい頃は良かったけど、大きくなったら結構ブサイクだなぁ」とか言って、人間の勝手な都合でポイ捨てしたような奴がいるのかもしれません。ひどい、ひどすぎる!


そう思いながら、ブサイクな茶色の犬に餌をやっていると、ノザキさんがいつもの軽トラックで様子を見にやってきました。


ちょっとノザキさーん、勝手に犬トレードしないでくださいよー、と告げると、ノザキさんはそんなこと知らないと頭を振ります。
じゃぁ、この茶色のブサイク犬は一体どこの子なのよ、ということでいろいろ原因を探ってみました。




・・・・・ブ〜ン・・・・ブーン・・・・



何やらかすかに何かの羽音が近くから聞こえてくるではないですか。耳を澄ますと音は樹上から聞こえてきます。見上げれば、ちらほらとミツバチが木々の合間を飛び交っているのが見えました。


もしや!と思うや否や、カービーは木にキックを食らわせました。


普段からやることなければ寂しさを紛らわすためにひたすら体を鍛えてるような男のキックです。それほど太くない樹木は葉っぱを震わせながらグラグラと揺れました。


その直後です。

はらはらと舞い落ちる葉っぱと一緒に何か黒い固まりがうんわぁと飛び出てきました。その黒い固形物は小さいミツバチが数十匹まとまった姿でした。もう今まで見たことないというくらいに一塊になった蜂の集団は、こちらとの距離を縮めながら、まるで人の表情のように動いていました。






問題の樹木の葉の影にそれは立派な蜂の巣があったのです。
カービーの「未来少年コナンキック」がよほど効いたのか、ものすごい羽音をたてて、その黒いうねりはカービー、ノザキさん、ブサイク犬に襲いかかってきました。


突然のハプニングにみな動揺していますが、ブサイク犬のそれは常軌を逸していました。カリカリカリカリ!と地面を掻きむしりながらロープが引きちぎれんばかりに逃げ出そうとしています。

これではっきりしてしまったことは、茶色い犬が蜂に刺されて顔面が変形していたということでした。それはもう半端ない変わりようで普通の犬がシェパードみたいな顔になっていたそうです。ブサイクとか言ってごめんなさい。


これはさすがに見てられないので、蜂に囲まれながらもカービーは一目散に犬の綱をほどきます。もう視界が覆われるくらいの蜂の数に腰が引けます。蜂ヒゲおじさんは本当にすごいと思いました。


        



綱がほどけると犬はすごい勢いで戦闘離脱していきました。ホッと胸をなで下ろす間もなく、カービーとノザキさんに蜂の追撃は続きます。


しかし、幕切れは一瞬でした。

ノザキさんがどこから持ってきたのか、でかいズタ袋で蜂の巣ごと覆ってしまったのです。


モサァ!


覆った布の中で蜂たちが、わんさわんさと動く様子が伝わってきます。いつ布の隙間からこいつらが飛び出してくるかと思うといても立ってもいられません。いくらミツバチといえど、同時に何カ所も刺さればカービーとてひとたまりもないでしょう。


とりあえず、近くにあったドラム缶を見つけると、その中にボッサァ!と巣ごとぶち込んでやりました。


何匹かは逃げ出してしまいましたが、急いでドラム缶に蓋をかぶせます。ドラム缶に耳を当てると、中からウワンウワンと羽音が聞こえてきます。


殺される!今出したら間違いなくヒットされる!そう思わせるには十分なほど羽音に殺意が籠もっていました。


このままにしておけば酸欠か何かで全滅させることができるのですが、放置しておくと何だかミツバチに呪い殺されそうな気がしてなりません。せめてもの慈悲とのことでいくつかの空気穴を開けておくことにしました。


しかし、今回は犬に悪いことしました。
別の犬に変身するまで気づいてやれなかったし、帰ってきたら何か美味いものをくれてやろう、鯉のお頭でもくれてやろう、とカービーのできる範囲でのお詫びをしてやりました。






そしてまた時間が経ちます。

東北の夏は短く、季節は秋へと移ろっていきます。

殺人ミツバチの影響で腫れた犬の顔もすっかり元通りになり、畑の作物もすっかり大きくなりました。特に夏場植えたひまわりがバカみたいにでかくなり、大量のひまわりの種を取ることできました。

でも、ようやく安定して野菜が食えるようになったとは言え、決して十分な量ではなく、腹を空かすの日常から脱せたわけでもありませんでした。


そんなある日、例のミツバチを隔離したドラム缶の横を通った時のことでした。例の少し大きめに開けた空気穴からチョロリとミツバチが顔を覗かせています。あれからいい加減経つのに、空気穴を出入り口に蜂がまだ活動を続けていたようです。






このドラム缶も小屋からそう遠くないとこにあるので、以前の悪夢を考えるとそのままにしておくことに少々不安が残ります。いっそ煙でいぶしてやろうか、と重しを乗せた蓋を取り除き、カービーは恐る恐る中を覗きこみました。



うおぉぉ!!



カービーの絶叫が山にこだましました。
ドラム缶の中には、放り投げた時より遙かにでかく成長した蜂の巣がびっしりと出来上がっていました。あんな小さい穴だけで、光も入らないようなところにこれだけの一大帝国を作り上げるとは・・・・。


虫のタフさ加減に恐れおののきながらも、カービーの目線はもうひとつの奇跡を見逃しませんでした。


それは巣の中にちらほらと鈍く光る黄金色の液体です。
蜂たちの生活とともに蓄えられていった蜂蜜が、ドラム缶の中で少しづつ精製され続けていたのです。


むおおおおぉぉぉぉぉ!!!

恐らく巣を見つけた時より数段でかい声がこだましました。
       


もう口から止めどなく流れるヨダレを抑えられません。それもそのはず、一度帰郷して以来、糖分とはとんと無縁な生活を送っており、作物でサトウキビでも育てれば良かったと思っていたほどに待望かつ渇望していた糖分がふいに現れたのです。


どんなに大の男でもこういう生活が続くと、何より甘いモノが食べたくなります。

オレも以前にカービーほどではないにしても、学生時代の合宿なんとして山ごもりをする期間がありました。その時も甘いものに飢えて飢えてしかたありませんでした。10`離れた牧場まで走って行ってソフトクリームを食うとかそういうレベルです。




それから間もなく、ノザキさんがやってきたので事情を説明し、例のドラム缶に案内しました。

「ほー、これだけ巣が立派だと相当はちみつ採れると思うよ」とノザキさんがニクイこと言います。

今すぐにでもこの蜂蜜をすすりとりたい!舐め取りたい!という気持ちはあるのですが、このままでは食べることができないそうで、その加工も含め、蜂の巣ごとノザキさんに一任することとしました。




そして、数日後。

ノザキさんが大きめの瓶いっぱいに入った蜂蜜を持ってきれくれました。待ちに待ちすぎて、ここのところ蜂蜜の夢しか見ていません。


待っていましたとばかりにさっそく、蜂蜜ティスティング大会の開催です。

スプーンなんて上等なものはないので、木の棒を瓶の中に突っ込みます。お前はプーさんか。

棒の先端につくと、にゅーっと伸びる蜂蜜。その粘度たるや市販のモノとは比べモノになりません。棒から滴り落ちる蜂蜜を愛おしそうに眺めてから、棒を口に含みます。その甘さと来たら、口に入れた瞬間に乳歯だったら即虫歯になるのではないかというほどです。


災い転じて福となす、犬には申し訳ありませんでしたが、貴重な栄養素と糖分を蜂蜜という形で入手することに成功しました。

山々にある木々や花々からミツバチによりちょっとづつ集められた果糖。カービーは大自然に活かされているのだと実感したそうです。



ありがとう、犬!ありがとう、蜂!ありがとう、プロポリス!


     



なんかコレ描いてて、ホットケーキがすごく食いたくなりました。


つづく










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「麻覇王」