キャンパスライフ 第4話 




前回のあらすじ…ハングリーさゼロのルームメイトがやってきた。



ここらへんで一回話を整理しましょう。
カービーは「環境芸術」という自然体験の中から芸術を生み出す勉強のために、ほぼ何の援助もなしに山に留まることになりました。
そして、たまに来ても何も教えてくれない講師と、やはり同様にたまに来ても何も喋らないルームメイトがやってきました。そして、これからもカービーの生活は続いていくわけですが、このあたりでカービーの暮らしぶりを図解で追ってみましょう。



本人に描いてもらった俯瞰図はおおよそこのようになっています。



地図の番号と対照して見てください。


@発電機
インフラ整備のほとんどない家ですが、電気だけは自家発電によって賄うことができました。その電気量たるや非常に微々たるものですが、電化製品は家の薄暗い電球とチェーンソーの充電くらいにしか使わないのでどうにかやっていくことができました。


Aドラム缶
そして、その自家発電機にも当然燃料が必要になります。そして、その燃料を買う金も術もないカービーですが、この燃料のみ唯一、学校側から支給されていたのです。

カービーの日課として、明るい時間帯にその発電機に燃料を入れておくのですが、発電機自体にはそう量は入りません。燃料は小屋から少し離れた位置にあるドラム缶に貯蔵されており、定期的にどこかの業者が「ほんとにこんなとこに住んでんのかよ?」と怪訝そうな表情で補給しに来るそうです。


B薪ストーブ
飯の煮炊きは、この室内にある薪ストーブで行います。
絵のようにストーブの一部が平たくなっており、本来であればヤカンか何かをかけておくスペースがありました。都市生活でも好んで薪ストーブを設置する人もいますが、これで全ての調理までこなす人はそういないでしょう。手間が多く大変ですが、その分お米なんかは美味しく食べられそうですね。その米があればの話ですが。


C土間
この部分は土です。
土ですが、カービーの台所でもあり作業場でもあります。
壁には凶器にも成りうる農作業・土木用の道具が揃っています。


D畳
この部分で寝起きしています。ただ、野菜などを入れる段ボール箱が半分を占めており、どうしても広々使えません。


E鶏小屋
ノザキさんの飼っている鶏。何でこんなところで飼っているのかは不明。たまに卵をもらえる。


F物置
素敵アイテムがたんまり入ってる。
とにかく資材が山盛り。でも食えるものは一切なし。


Gタンス
このタンスがかなりの曲者です。
当然、そんなものがあれば何か食べられるものはないかと捜索することでしょう。カービーも然りでした。

       


しかし、中から出てくるものは、よくわからない薬ばかり。それも大量にびっちり入っているそうです。おそらく栄養剤代わりにはならないでしょう。

何でこんな山奥に薬があるのだろう?その問いは他の引き出しに隠されていました。


それは誰がつけたかわからない一冊の日記帳です。

その日記には、この小屋で暮らす二人の男女の物語が綴られていました。
こう書くと何かの恋愛物語を想像されるかもしれませんが、その境遇はひたすら悲惨なものでした。
ある学校の特待生として、この山に送り込まれた若い男女。この二人にはある使命というか課題が与えられていました。

その課題とは「家を建てること」。

その家は何に使われるのか、何のためなのかわかりませんが、そんな漠然としながらも難易度の高い課題に二人は取り組んでいきます。もしかして、二人は建築科や、インテリアデザイン科のホープだったのでしょうか。


日記の中では、男性側の「こんなことできるかよ」といったぼやきさながらの内容が書き綴られていました。それでも、何もやることのない山の中、食糧難に襲われながらも試行錯誤で家造りが進められていきました。


そういえば、小屋から少し離れたところに作りかけのまま放棄され、朽ち果てた家状のものがあったのですが、この文面からしてそのもののようです。
そして、家造りのための資材がFの倉庫に収められていたわけです。道理で土木作業の道具が豊富だと思ったら。


しかし、日記は日を追うにつれ、静かに異常を来していきます。男性の文面がどんどん危うい方向に走ってきているのです。


当初の日記帳としての形態は崩れていき、わけのわからないワンポイントアドバイスが満載になってきました。その中から一つ紹介すると…


        

「蛙の頭から出る液を乾かして吸うとハイになる」

      

吉田戦車の漫画に出てくるクリームヘッド族じゃあるまいし、そんな液出るのか?と思いますが、種類によって蛙は天敵に食われないための工夫として、生命の危険を感じると頭頂部から敵の嫌がる白い汁を出すそうです。本当かどうか知らないけど。

そして、射手座のアナタはその汁を採取すると良いことあるかも!といったようなアドバイスがてんこ盛りになっているそうです。怖い!そして果てしなく痛いよ、この先輩!おばあちゃんのシワ袋でもそんな情報入ってねぇよ。


その後の日記はもう見るに耐えないものとなっていました。
いや、もう日記と呼べる代物ではなく、幼稚園児の所有する自由帳なみにフリーダム。気持ち悪くもグロイズムなイラストが文字代わりにビッシリ書かれていたそうです。今なら言える、あのタンスの中に満載のお薬はイケナイお薬。


暇つぶしに最初から読んでいたカービーは強い毒気に当てられ、目眩を覚えました。オレなら吐くかもしれん。

もうこの日記帳からは二人がどうなったかは読みとることができません。ただ、あの作りかけの家を見る限り、ハッピーエンドで終わった様子はないようです。なんだかちょっとしたホラー映画みたいなノリになってしまいました。



後日、ノザキさんにその二人のことを伺いました。

男性の方は日記帳のとおり、精神的に病んでしまい下山したようです。ただし、最終局面ではコンパス片手に山の中を歩き回り、遭難してしまうという伝説を作ったそうです。うーん、キテるなぁ。(無事救出されたそうです)


女性の方はというと、無事下山し、現在は学校を相手取って訴訟を起こしている模様です。

先日、見知らぬ人が来て、小屋の周辺の写真を撮っていました。その男性に何をしているのか問うと、特に理由も言わずに「こんなところ、早く降りた方が身のためだよ…」と言ってくるばかりでした。その時は気づきませんでしたが、あの言葉を投げかけてくれた人は訴訟中の女性の関係者だったのかもしれません。


あぁ、未だにこの連鎖は続いているんだ…、カービーは当初の日記に書かれた希望に満ちあふれる二人を思い出しては、ひどく不憫に思うのでした。


でも、それって今のカービーとあまり変わらなくないですか。


       






つづく