【フリークライマーへの道】 第3話 



辱めにあったことは忘れて、別の施設を見てみましょう。

先ほどの壁登りは命綱(ハーネス)の着用義務があるので、一人で来たときには遊ぶことができません。他のお客さんに命綱を任せるというのも手ですが、オレならまず預かりたくありません。
人によっては「恥ずかし固め」を食らわせたい気持ちはありますが、やはり他人の命ってのはそんな理由(股間に命綱を食い込ます行為)で預かってはいけないと思うのです。


そんな時は、ボルダリングという競技があります。
これは一人用の競技で、こちらは命綱をしなくて良いぶん、高さは3mちょい。落ちてもマットで耐えられるくらいの高さになっています。
おいおい、さっきその2倍以上の高さとオーバーハングをクリアしてきた男に何を今さらやらせるんだい?と鼻で笑いながらトライして痛い目見ました。全然クリアできない。


それもそのはず、このボルダリングは単純に壁にあるホールド(※)をガシガシと登るものではなく、しっかりとしたルールとルートに基づいて登るものなのです。

※ホールド=壁にくっついた石みたいなもので、これに手がかり、あしがかりに登っていきます



       ビジターコースの課題表


例えば、赤丸のテーピングがしてあるホールドをスタート地点とした場合、以降その赤丸印以外のホールドに触れてはならないのです。で、最後にその赤丸のホールドを両手で触れれば見事クリアってなことらしいです。

これにより、次のホールドが微妙に遠くて手が届かなかったり、途中にお邪魔石があったり、こんなもん握れるか!?という形状をしていたり、もっとしっかり掴んでくれなきゃアタシどっか行っちゃうよ!?といった多種多様なホールドがあり、そのおかげで難易度が分かれてくるのです。


         

例に書いてみたのですが、このホールドなんぞはかなり苦戦させられてます。この薄っぺらいうえに細長い形状。持ちづらいったらありゃしない。


そして、そのテープの張り方により、それほど大きくない壁面に十数種類ものコースが設けられるにいたるのです。

ちなみにその難易度は10級から始まり、3級まで。
最初に勘違いして3級が一番レベルが低いと思ってやりましたが、2個目のホールドに移動するだけで挫折しました。

なお、2級以上はこのコースでは設定できないそうです。つまり、3級クリアーできる人は会員登録して専用コースに行くしかないのです。
ただ、会員専用コースを見学したところですね、スタート地点が130度くらいあるのですよ。(階段の裏側を登るイメージです)
「それじゃスタートしまーす」と姿勢を取った時点で、ナマケモノのような状態になることが想像されます。まず最初に腕もげるわ。



他にも会員用コースは恐ろしいことに、こんなホールドが存在します。



何々?何なの?この銀色に鈍く光る憎いヤツは。
明らかに素材感が違うそれはステンレスのボウルのようでした。
たいていのものは握りづらいなりに体重のかけ方を工夫すればどうにかなりそうですが、これはどうなんでしょう。

仮に500円玉を四つ折りできるような握力さえあればどうにかなるかもしれませんが、5円チョコがせいぜいのオレでは如何ともし難いと思われます。まず、そこまでたどり着くことすらできませんが。




上を見ていたらキリがないので、ギュウギュウにきつい靴を履くと壁にとっとと貼り付くこととしました。
前述したとおり高さは大したことありませんし、ちょっと強引な登り方しても大丈夫だろうとタカを括っていたのを見抜いたのか、友人がオレにアドバイスをくれました。


それは『怪我する時は高さなんて関係ない』ってことでした。


以前、友人が他のメンバーでここを訪れた時のことです。

その中に一際体格のよい男性がおり、オレから見てもこのフリークライミングには向いてないなと思わせること受けあいでした。
でも、それを克服するためにこういったスポーツを始めることは非常に有意義であり、始める前からそんな死刑宣告みたいなことを言ってはなりません。それは友人も一緒だったのでしょう。


ホールドだらけの壁を前に初心者だらけの友人達は盛り上がります。やぁやぁ、オレ3級から始めちゃうかな?いやいや止めとけ止めとけ、大人しく10級から初めておけよ、とこれから始まるクライミングに興奮を抑えきれないようです。


そして、友人が目を離した矢先に事件が起きました。

        

悲鳴をあげ、かがみ込む体格の良いメガネ。
見ると体格の良い真ん中分けメガネの指の爪がキレイに剥げていました。

まだ登ってもいないのにどうしたことか!?と皆が体格のよい真ん中分け曇りメガネを囲みます。


しかし、そこには大きな間違いありました。
彼は登っていたのです。


しっかりと10pほど。




10p。例えるならヤクルト一本分の高さ程度のホールドに足をかけ、滑り落ち、見事爪がおさらばしてしまったということです。カ、カッコ悪!


実践はしたくないので、高さには十分注意しましょう。





つづく(次回は登ります)