【フリークライマーへの道】 第2話



靴のサイズで限界突破をしたところで、早速壁面に取り付いてみたいと思います。

このウォールストリートさんでは、会場は二つに仕切られており、一つは我々初心者用のビジターコース、もうひとつは難易度の高い会員専用コース。
友人はすでに何度かの経験を積んでいるため、壁を見てオタオタしているヒゲ男に比べ動きに無駄がありません。さくさくと手際良く、何だかよくわからん器具の準備をしてくれています。

「じゃ、とりあえず登ってみてください」と友人が高さ7〜8mはあろうかという壁を指差します。ビジターコースといえどその高さはかなりのもので、見上げて思わず唾を飲み込んでしまいました。ゴックリ・・・

では、さっそく…と手をかける前に忘れてはならないのが、さきほど友人が用意してくれた装備品の着用です。これだけの高さですとやはり命綱は必須アイテムなのです。


      


最初にハーネスと言われるまわし状のものをこれでもかとばかりにギュウギュウ締め上げます。昔、バンジージャンプやった時にも似たようなものをつけたな。さらにそれに命綱の金具をしっかりと取り付けてスタートです。

とりあえず石みたいなもんが数多くあるので、手をかけるものには困りません。手近なところに手を伸ばしガツガツと上を目指します。


         


いやいや楽勝楽勝、と言ってられるのも半ばまで。
中盤からちょっと壁面が反り返ってます。オーバーハングとか言われる90度以上の壁のことです。


ほんの一部分だけ120度くらいになっているのですが、これがマジできつい。やってみるとわかるのですが、壁面から体が離れてしまうととんでもなく手足に負担がかかるんです。


      


ですから、このようなオーバーハングしている場所ですと、余計に体力を消耗してしまうのです。


どうやって登ってやろうか?と思案しながら壁に張り付いているとJOJO第2部の波紋修行をやっている気分になってきました。これで壁面の途中から油が超高圧で噴出す箇所などがあればいうことはありません。


         

「あのアマー!どうしてくれようかー」と一人つぶやけるのもフリークライミングの醍醐味と言えるでしょう。


そこもどうにかこうにか登りきると頂上(天井)はもうすぐ。一番上のホールドに触り、ちょっとばかり見下ろすと軽く股間が縮み上がる高さとなっていました。

さっきの難所で握力を使い果たしている身としてはすぐにでもここから降りたいのですが、どうやって降りるのか聞いてませんでした。まさかシーザーが上から引っ張りあげてくれるサービスはないでしょうし。


そこで下方より、「そういう時は『テンション』と言ってください」と友人のアドバイス。このテンションという合言葉により、命綱を握る補助者がその綱をぐいっとひっぱり、たるみを無くします。そうしないとたるみの分だけ登っている人はいざって時に落下してしまうからです。
で、テンション状態が確認できたらホールドから手を離し、あとは滑車により緩やかに自由落下と相成るわけです。



などという長ったらしい説明が、この限界状態で理解できるわけもなく、とりあえずテンションを「キスミーキスミー、今すぐキスミー」的なノリで連呼しました。


        

ここでは補助者が極度のSでないことが理想的です。その窮状っぷりを楽しむためになかなか綱をテンションしてくれないからです。


そしてようやくゆっくりと降ろしてもらうのですが、この作業においても補助者が極度のSでないことが理想的です。


地表スレスレ、地面まであと5センチというところで止められ、ハーネスがグイグイと食い込む様子を他のギャラリーに見せつけられるからです。

   


もう何でもいいから早く降ろしてくれ。





つづく