お見合いパーティーに行ってきた  最終話




真っ白な第一印象結果が返却され、フリータイムがやってきました。泣いても笑ってもこのフリータイムを最後に最終審査結果が出てしまいます。


本当ならば「野球は3回裏コールド負けまであと1ボールからだ!今日だけで12個のフォアボール出してるけどがんばろうぜ!」とか言って、最後まで希望を捨てずに臨んでいくところなんですが、今回に関してはどうにもやる気が出ないのです。
もうあとは結果だけ聞いて、この話をどう構成していくかを考え始めているほどでした。
んー、しかしオチが弱いなぁ、オレが失敗することなんて目に見えてたことだしなぁ、と考えていると一時休憩に来たお父さんが目の前に来ました。

そうかコイツがいた。

どうせお父さんのことだから、きっと女性参加者に罵詈雑言を浴びせられて、「もう人間界には降りてこない」とか言い出すに決まってる。

そしてオチは【3人とも全滅でした】ってなるのです。
うん、悪くないよね。それも。妥当な線だよ。


そう思っているとお父さんの方から声をかけてきました。



「ケイスケさーん、どうでした?」



どうしたもこうしたもねぇよ。ズタボロだよ。サンドバッグみたいなもんだよ。中身の砂(小便)が漏れるかと思ったよ。
そう言いながら、真っ白の第一次審査結果の紙を見せました。

で、どうよ。楽しんでる?



「いやぁ結構面白いッスねぇ!」



お父さんは頬を少し上気させて言いました。
その話しぶりからは悲壮感などを感じさせません。

この子ったら駄目だったろうにこんな気丈に振る舞って!こっちまで泣けてくるっつーの。で、聞くだけ時間の無駄だと思うけど、どうだったのよ?一時結果見せてみ?



「あぁ、はい。」



ジャージのポケットからゴソゴソと紙切れを取り出し、オレの前で紙を開くお父さん。

それは開けてはならないと言われているパンドラの箱でした。







いっそのこと自ら目潰しを敢行し、この現実を無きものにしようかと思うほどの衝撃がオレの体を突き抜けました。


魚のように口をパクパクさせながら、紙とお父さんの顔を見比べます。
紙越しに見えるお父さんの顔にはネットリとした優越感が見えます。それは開場前の不安に狼狽していた男とは思えないほどに悠然と余裕を持った漢の顔でした。貴族かと思った。

まぁオレも大人ですから悔しってばかりもいられません。
今は予想だにしなかったお父さんの活躍を心から祝福しなければなりません。もちごめと小豆があったらこの場で赤飯炊いてやりたい。


しかし、お父さんは飲み物を取るとすぐさま女性の元へ行ってしまいました。ここで一人でいるのもなんだし、せっかくなのでオレもお父さんの後をついて行き、グループに加わろうとしました。

するとどうでしょう。露骨に顔をゆがめ、野良犬を追っ払うかのようなリアクションを取ります。



「ちょっとケイスケさ〜ん、邪魔しないでくださいよ〜!」



正体を現したな!この妖怪め!
モテだした途端に手のひら返しやがった。眼球めがけて公園の砂を投げつけてやりたい衝動に駆られます。


そんな態度でオレ(負け犬)を他所へ追い払おうとするお父さん。
オレは彼を見て、ある一大決心を行いました。



邪魔してやろう!



女性が「何でジャージなの?」と聞いてくれば、お父さんが答えるより先に回答してやります。


あー、コイツね。こんな格好してるし、肩に穴とか空いてるけどね、こう見えて結構オシャレなのよ。すごいよ?やっぱりオシャレは見えないとこからって言うじゃない?だから、ジーンズの下にはガーターベルト。パンツは編み目のデカイ毛糸のパンツ。うわ、お前それパンツの意味ねぇよ!ちょっとは隠そうとする意思を持てよ!とかね、そんなレベルのヤツなのね。もうファッション雑誌とかも放っておかないよと思うよ、絶対、多分。

          
            提供:お父さん


もうあることないこと、むしろ全部ないことなんですが、女性にまくし立ててやりました。笑いの風はコチラ向きになり、その後のお父さんの存在を霞ませてやるとともに、マイナスイメージをばっちり植え込んできました。






そしてフリータイム終了。


いやー、後半はかなり盛り返したと思いますよ。前半と違いしっかり笑いは取れたし、ってバカ。お見合いパーティーの趣旨を完全に取り違えてるよ、オレ。
しかし、悔やまれるのは後半の時間の短さでした。
2分もすると他のメンバーと入れ替われと言わんばかりに鐘を鳴らす係員。というかメンバーチェンジ!ってハッキリと言ってたけど。何にしてもこれまた短すぎるぜ、2分てのはよぉ!フリータイムの「フリー」はどこにいったんだよ、チキショイ。



そして、また同様に小さい紙に気に入った人の番号を記載します。

前回と違う点は、「本命」を1名、「友達」を2名、選択できるということでした。ここでももちろん何も書かないという選択もOKです。
オレ個人としてはメモ用紙をご覧のとおり、ネットをやってるかどうかしかわかりませんから、名前と番号がまったく一致しない始末。ホント何しにきたんだろう。



集計を終えた係員が会場に戻ると、静かにマイクを取り上げ運命の結果発表を行います。



「えー、みなさま!長らくお待たせいたしました!これより最終結果発表をさせていただきます!」



静まりかえる会場内。
唾を飲む音すら聞こえそうなほど、会場内は緊迫しています。


オレとホストを除いては。

  


そらそうですよ。
オレ達に明日はありませんもの。


参加者の反応を楽しむかのようにグルリと周囲を見渡した後、司会者はその結果を告げました。



「残念ながら『本命カップル』はおりませんでした!」



あら、みんな身持ちが堅いのね。慎重すぎるんでなくて?



「しかしながら、『友達カップル』は3組誕生しました!おめでとうございます!」



おお・・・と周りの人間が声を上げました。
そして順番にカップルとなった人々の番号を読み上げます。
呼ばれた男女は照れながらも、少しだけ互いの視線を絡ませていました。お友達カップルという、ちょっと気楽な立場からどのように関係が発展するのか気になるところであります。
嘘です。本当は他人の恋愛に興味などまったくありません。せいぜいお幸せにな!ペッ!



そして、最後の3組目に奇跡は起きました。



「男性18番と女性11番!カップル誕生です!」



男性18番。それはお父さんに割り当てられた番号でした。

「やった!」高々と腕を振り上げるお父さん。
誰も拍手とかしてないけど、オレとホストは邪魔したことを棚に上げ、拍手として最大の賛辞をお父さんに送りました。おめでとう、お父さん!いっそのこと結婚しちまえ、お父さん!


司会者に呼ばれ、女性とともに一時場を離れたお父さん。
しばらくすると、オレらの元に帰ってきた時には赤い紙を手にしていました。
なんだそりゃ?とのぞき込むとカップルになった女性の携帯電話番号が記されています。おー!

すげぇなぁ!やったじゃん!とその成果を讃えるとこの男はどんどん増長していきました。




今まで貧弱の見本だったような男が、ブルワーカー(筋肉鍛えるマシン)で、モテ男に変身したような変わり振りです。しまいにゃ、「じゃ、帰ろうか、ケイスケくん!」とか言い出す始末。すげぇムカツク。
帰りの車内では行きと同様に滅茶苦茶にこき下ろしてやりましたが、どんな言葉も今の彼にはまったく通用しませんでした。それもそのはず、結果的にオレ達は負け犬で、彼は成功者だからです。そんな言葉が届くはずがありません。

きっと後世にも彼の「ハンサム伝説」が語り継がれることでしょう。




これで、一カ月に渡った「お見合いパーティーに行ってきた」は終了です。
結果的に5,000円を払い、女性の携帯電話番号を手に入れることができたわけですが、これを高いと見るか安いと見るかはやはり人それぞれでしょう。(オレは高いと思います。)
特に時間の短さが一番の問題でしょうか。この一連の流れがわずか一時間たらず(45分くらい?)で終了し、メシも酒もないのにこの値段はないと思います。
あと大事なのは女性との人数比ですよね。今回は男2:女1ですからねぇ。

さらには、こういう場ですからサクラの存在というのも十分にあり得ますし、失敗するケースの方が圧倒的に多いことでしょう。
しかし、それらを凌駕する話術や個性・容姿があるのならば、サクラですら意のままとし、同時に3人までの番号を手に入れることもできるかもしれません。さらには・・・まぁご想像にお任せしますが、話のタネに一度行ってみるのも良いかもしれません。


■ワンポイントアドバイス 『行く前にユニクロに寄れ』


さらにオプションサービスとして、別途金額を払えばカップルになれなかった意中の人ととの連絡を取ることも可能なようです。
つか、初めからそっちのシステム狙いの人とかいるんじゃないだろうか?





さて最後になりますが、帰りの車内でお父さん(ハンサム)に成功の秘訣を伝授していただこうと質問をしてみました。

いくら服装がこの会場に最高にハマっていたとは言え、なぜああまでうまくいったのかがすごく気になります。



何で?ねぇ何でよ?




お父さん(トレンディ)はもったいぶるように言いました。







遠回しに「ブサイク」を宣告されました。

いつ以来でしょうか。矛先がこんなにも明確な殺意を覚えたのは。






















「やっぱ、男は『顔』ですよ!」