お見合いパーティーに行ってきた  第4話





「へー、ひきこもりなんだー。そう見えないねー」


そう言った女性の目元は笑っていませんでした。明らかに汚物を見るかの如き視線。

その後、他の女性に対しても分け隔てない展開をし、確かに笑いは取れました。しかし、それは失笑というか哀れみみたいなもんで「笑われた」という感覚に近いものでした。
オレの目論見であるギャップ作戦は音を立てて崩れ去ったのです。

仕事以外はほとんど家でインターネットばっかりやっている青年が今日は一念発起してお見合いパーティーに来てみた、という設定での展開を考えていましたが、もうどうでも良くなってきましたよ。
その後は自棄になってこの会場をいつ追い出されてもおかしくない発言を連発してきました。


「ネットっていいもんだよ!」


「『萌え』って意味を知ってる?」


「ここのところ2次元の女性としか話していない」


「カレーなら一ヶ月続いても大丈夫」






このご時世ですから、通報されなくて本当に良かった。
最初は冗談で言っていたのですが、それに対する女性の反応が「へーそうなんだー」みたいにツッコミとかまったくないんですよ。いや、そこで納得されたら話は終わりじゃないですか。ギャップも糞もあったもんじゃない。
何より女性側の無反応による拒絶みたいなもんが一番きつかったです。




そして、20分後。辛く長かったトークタイム終了。

お陰様で9人と1分づつ話をしましたが手応えゼロ。こんなことなら女性が集まらなくても良かったんじゃないかと思った。


そして次の作業が今回の山場となります。
それは、気に入った女性・男性の番号を小さな紙に書いて提出することでした。ここでお互いにフィーリングが合っているかどうかがわかるのです。

つまり今までの時間は第1次審査みたいなもので、この後、迎えるフリータイムが第2次審査となり、終了後に最終結果が出るという仕組みになっていたのでした。


負け惜しみではないのですが、今日来ている女性の中にオレのタイプはおらず、誰を「お気に入り」として書こうか考えてしまいました。まったく何も書かないというのも一つの選択肢だとは思いますが、それではイマイチ面白くありません。


誰にしようかとオレは手元にあるメモ用紙を取り出しました。

説明をしていませんでしたが、このメモ用紙は主催者側から配られるもので、番号ごとにマス目の入った用紙に自分なりの感想などをチェックしていくものでした。
例えば、「16番の女性はツボなので、◎。」とか、「19番の女性はあまりにも夢見がちだから、×」とかそういうことです。



正直女性の名前もマトモに覚えていなかったため、改めてメモ用紙を眺めようとしたのでした。











【メモ用紙の一部】


このメモ用紙からはネットをやっているかどうかしかわかりません。この役立たず!

でもお陰で9人中、ネットを使ってる人は2人しかいないことがわかりました。話が合うはずがない。
まぁ終始そんな話しかしてなかったのだから仕方ありません。
このままでは書きようがないので、一番ウケが良かったと思われる女性(もちろんネットをやっている人)の番号を書いて係の人に渡しました。


すべての紙を回収し終えると、第1次審査の集計をするため係員は一度退場し、この場はフリータイムへと移行しました。


ここでようやく飲み物が運び込まれてきました。

飲み物はオレンジジュースとウーロン茶のみ。
食べ物は一切ナシ。ここでも想像していたパーティーとの違いに肩を落としました。事前に「会場で酒飲みすぎてぶっ倒れないようにしようぜー」とか「駄目そうだったらずっとメシ食ってますから!」といった話をしていたのが馬鹿みたいでした。
気分的にはやけ酒でも飲みたいところなのですが、ウーロン茶では酔えやしません。




トイレで一休憩し部屋に戻ってくると、男性女性ともにそれぞれのグループに分かれ談笑をしていました。

やはり狙いを定めて集中攻撃しているのでしょう。人気が高いと思われる女性の周りにはたくさんの男性陣が陣取っていました。その中にはお父さんの姿もあります。あいつ頑張ってるなぁ。
そして、尿意に負けたオレの居場所はもうどこにもありませんでした。ここでも完全に出遅れ。いよいよ持って煮詰まってきました。


今さらながらどこかのグループに入っていくのも面倒臭いし、ちびちびとウーロン茶を飲んでいると男性係員がオレの肩を叩きます。



「先ほどの結果です。どうぞ。」



渡された小さな紙には『第一印象結果』と書かれていました。
ここに先ほどのセンター試験の結果が記されているのです。久々にテスト後の学生のような気分になりました。

そして、襟を正し、そぉぅっと渡された小さな紙を開きます。










わー、見事なまでに真っ白。ファック。

わかってた、先生、ホントは全部わかってた。そういう結果だろうと大人の度量で受け止める準備してた。
でも、なんだろう。目から熱い水がわき出てくるんだ。これ、ワシの泪じゃね?




チラリと横を見るとこの紙を握りしめたホストが居ました。力強く握りしめた紙はもうすでにグシャグシャです。





「・・・・ケイスケさん・・・・オレ・・・オレ・・・・」


皆まで言うな。・・・わかってる、先生わかってる!お前の無念さは先生が一番良く知ってる!

そう言いながらホストの肩をポンと叩くと、ホストは手に持ったウーロン茶を一気に飲み干しました。
どうやらホストの立てた『甘党作戦』は見事に的を外し、女性との会話は「若いねぇ」とか「こんなとこ来なくていいんじゃない?」くらいのことしか言われなかったそうです。哀れ、ホスト。


「ホント、飲まなきゃやってられないッスよ!」


そう言い、ホストはさらにウーロン茶をコップに注ぎました。


そう、確かにコレは第一印象での結果のみで最終的なものではありません。しかし、ただの一つとして○もつかず、フリータイムにもあぶれたこのような状況ではあまりにも勝算はゼロに近かったのです。
そして何より期待なんてしていませんでしたが、見える形で「駄目さ加減」を提示されると結構こみ上げるものがあったのです。



高いウーロン茶になったなぁ、と呟きながら部屋の隅でウーロン茶をすすっていると、ていると女性の係員が背後からオレに声をかけてきました。







「あのぁ・・・来週の土曜日って空いてます?」




うわー、きたー。
急転直下。こ、これ逆ナンてやつですよね?
係の女性が仕事という枠を越えて、誘ってきちゃったわけですよね?ビバ公私混同!
もしミスターがいたら、「んー、奇跡のミラクルってとことでしょうかー」とコメントしていただきたい。

さっきは「参加者に好みの女性はいない」なんて言いましたけど、実は係の女性が一番タイプだったのですよ、オレ。全米第1位!







「来週、〇〇ホテルでまたこういうパーティーがあるんですけど・・・どうですか?」



行かねぇよ。

後で、絶対第一印象で「○」をつけてもらえなそうな男性が同様に声をかけられているのを見てね、先生すぐわかった。そういう可哀想な境遇の人に声かけてるんだってことが。



先生、みんなの前でノンフィクション泣きしてもいいかな?









次回最終話 『お父さんの結果発表』をお楽しみに。