お見合いパーティーに行ってきた 第3話





薄暗く狭い室内には、人いきれするほどの人数が詰め込まれていました。男性は20名。女性は9名。状況はあまり良いとは言えませんが、戦士はどんな状況でもただベストを尽くすだけです。


しかし、今後の行動に大きく影響を与えるような問題を抱えていることを思い出しました。

これは会場内に男性陣が集まり始めると同時に気づいたことなんですが、「男性の服装がすんごい地味」なのです。


最初、オレの隣に座った男の人はくたびれた感じのパーカーにチノパン、「これからレンタルビデオ返してくるわ」とか言い出しそうな出で立ちでした。
その次に入ってきた男の人はあきらかにスゥエットみたいな服を着てます。他にもセカンドバッグ持ってる男の人とか、シャツをパンツに全部入れてる人(オシャレには入れてる感じではない)とか、とにかく全体的に地味な服装な感じの方が多かったのです。いや、まぁ普通の人とかもいたのですが、それでも目立たない程度の服装です。
そして年齢層も気持ち高めで30歳〜40歳といったところでしょうか。


そして、さらに数人が集まり、最終的に20人という人数となった時にその悪い胸騒ぎはある結論を導き出しました。




周りを見渡しながらホストが小さく呟きました。


「・・・ケイスケさん、オレ達・・・・浮いてますよ・・・」


そうなのです。冷静にオレとホストの格好を見ると、明かに浮いているのです。
ここにきて、【お見合い】ということで少し気合いを入れたのが裏目に出たのです。周りと比較すると、完全に「遊び人」みたいな印象を持たれること受けあいです。うわー!


逆にお父さん(タモツジャージ)を見ようとすると違和感なさすぎて探し出すことができない。
もうね、「ジャージが僕らのユニフォーム」とか言われても今なら納得できる。この場でジャージを来てないオレとホストが異端児のような扱いを受けているかのような錯覚に陥ります。

お父さんの目にも少しだけ優越感みたいなものが見て取れます。コンチキショウ。



この場に集まる男性陣の傾向を考えてみましょう。


・お金を払って女性を紹介してもらうくらいなので、やはり若干モテナイ。

・モテナイわけではないが、忙しくて出会いがないので、お金を払ってこういう場に来てみた

・モテナイうえにお金を払って冷やかしに来てみた(ヒゲ・ホスト・タモツジャージ)


失礼な話ながら、パッと見てやはり前者に当てはまる男性が多いように感じました。そして、服装にもそれほど気を遣わない方もまたそれ相応にいるわけです。

しかし、多数の優位性ってやつでしょうか。人数が多いものほど、それがオーソドックスなものになるというケースは多々あります。
つまり、この場において言えば、オレ・ホストの格好は若干【誠実さ】や【堅実性】に欠けるものがあるのかもしれません。うわぁ、えらいこっちゃ。



急いでストールを【中尾巻き】にするも、時すでに遅し。





しかし、今さらユニクロに戻っている暇はありません。
そう戦争はもう始まっているのです。








そして、手慣れた感じで司会の男性が進行を始めました。


「さて、それでは男性はこちらの外側の席に座ってください!」


司会が脇に置いてある小さいラジカセのスイッチを入れると、控えめな音楽が会場に流れました。

司会は説明を続けます。


「これから、男性陣には女性全員とお話できるような形で女性陣の周りを順番に回っていただきます。それと大事なことなのですが、次の人も控えていますので、一人制限時間1分までとさせていただきます!」



絵にすると大体こんな感じです。


「それではみなさんがお席につきましたら、スタートです!」


胸につけた番号を頼りに女性陣は中央の席、男性陣はそれを取り囲むように着席しました。

しかし、制限時間1分てのは短すぎるだろ?
お互いに自己紹介し合ったら、30秒づつってことでしょ?ほとんどすれ違いみたいなもんですよ。
「熱湯コマーシャルかよ!」と悪態をつきながらも、オレの手には一発逆転をも狙えるかもしれない秘策が握られていました。



実は入場とともに、「これを書いておいてください」と渡された【自己紹介カード】なるものがあるのです。

このカードは名前の他、居住地・年齢・職業・年収などを書く欄が設けられており、自己紹介時にはお互いに交換するものとなります。

ホストから事前に聞かされていたのですが、進行の都合上この自己紹介にかけられる時間はすこぶる短いのが通常のようです。それを解決するために、口答での自己紹介のうえにこういったカードが用意されるわけです。


そして、ここにお見合いパーティーの神髄がありました。
つまり、自分を売り込む時間が短ければ短いほどにこのカードの重要性が増してくることにその理由はあります。
まぁ早い話、「職業・年収」の欄にでも「医者・2,000万」とでも書いておけば楽勝なわけです。きっと入れ食いだよ!
しかし、名前・住所ともに偽装しているオレが言える話ではないですが、そこまで嘘を並べ立てるのはちょっと気が引けます。もとよりすぐにボロが出て嘘として成立しないでしょうけども。


そこで、短時間に人の気をひくことができるのか、強烈な印象を残すことができるのかを待ち時間に考えました。


そして、一つの結論に辿り着きました。

それは【ギャップ】です。
男も女もふいにこのギャップを見せられることに弱いと思うのです。

例えば、見た目が明かに前科以上に余罪がありそうな暴漢っぽい人が居たとします。で、その人が自分の身を挺して子犬を助けたりしたら、そらもう胸キュンするわけです。それももう間違いなく。
その逆もまた然り、いつも居丈高に振る舞うお嬢様とかがふいに現れたネズミあたりにビックリして泣きついてきた日にゃ、もうクラッと来ちゃうわけですよ。お嬢様ッ!とか言って抱きしめたくなるわけですよ。

どっちのエピソードもまずお目にかかったことありませんけども。




話を戻しますと、今この場におけるオレのステータスは恐らく、「遊び人ぽい人、チャラついたヒゲの兄ちゃん」とかその程度のものだと認識しています。

つまりはこれを逆手に取った『ギャップを感じさせる』カード構成を心掛ければ良いんです。


ということでこんな感じに仕上げてみました。








オレの趣味





オレの自己PR文



えッ!なんかチャラチャラしてそうなのに、引きこもってるんだ!ド・ドッキッューーーーン!!!(トキメキ音)てな反応が目に浮かぶようです。と、獲った!

※カードは最後に回収されてしまったため、現物はお見せできませんが本当に書きました




自分の分が書き終わると今度は人がどう書いたのかが気になり出しました。
そして、隣のホストの自己PR文を見せてもらいました。どれどれ?


【 自己PR … 甘党! 】


それだけ?と聞くとホストは自信満々にコクリと頷きました。


ホストの考えるシナリオはこうでした。

「女性は甘いものが好き」
       ↓
「自己PR…甘党!」 
       ↓
「女性、【甘党!】という言葉に食いつく」
       ↓
「美味しいお店知ってるよ、今度食べに行かない?」
       ↓
「貴方とならどこまでも」
       ↓
「カップル成立!」



やーやー、そんなオイシイ展開があるわけないじゃない。ホント、女性をバカにしてんのか?甘いんだよ、見積もりが甘いんだよ!











PR文に「甘党」を追加。(ビックリマークがホストより一つ多いのがポイント)




そして、今やこの場に馴染みきってるお父さんの自己紹介カードを奪い取りました。


【 自己PR … いやし系 】



つか、自分で言うなよ。ホントどの面下げて言ってんだよ。
お前のどこが癒し系なんだ!?…ってあれ?でも太い眉、そして眉より線のような細い目。よくみると仏様っぽい。
帽子についたワカサギの鱗が自然派みたいなのを醸し出してるせいもあるかもしれませんが、コイツはコイツなりに結構癒し系かもしれない。

うん、これはこれで話を引き出すには良いのかもしれません。




そんなわけでそれぞれが、それぞれの思惑を持って自己紹介カードを書き上げ、今こうしてその真価を目の当たりにしようとしています。


そして、年のころなら20代後半と思しき女性の前に着席しました。
女性はこの会場内では比較的派手目な格好をしている方で、あまりこちらと目を合わせようとしません。


とりあえず、のぞき込むように「初めましてこんばんわ」と挨拶を交わしながら、カードを互いに交換しました。


すると、女性のカードに視線を移すと同時に間髪入れず、女性は声を上げました。



「え?【ひきこもり】なんですかー!?」



やはりそこを突いてきたか。だが、それでいい!



「えー、そうなんですよー。」



女性の自己紹介カードを読みながら、彼女の表情をチラリと盗み見てみました。






精肉場に送られる豚を見るような目で見られた。

引きこもりに愛の手を。





つづく