「お見合いパーティーに行ってきた」 第2話




会場は結婚式も行える規模のちょっと大きなホテルでした。


開始時刻より早く到着したためソファで一服していると、結婚式帰りかと思われる艶やかな女性達がオレ達の前を通り過ぎます。あー、さっきの子きれいじゃない?あの子もしかしたら参加者じゃない?わー、いい匂い!などと話は否応なしに盛り上がります。




負け犬の目をしたタモツジャージ以外は。






まぁ、元気出せよ。どっちみちジャッケト買う金なかったじゃん。それにもしかしたらすっごい近眼のメガネっ娘がメガネ忘れてくるかもしれないじゃん。あれ?メガネっ娘好きでしたよね?メガネ萌えですよね?


しかし、オレらの決死のフォローも今のお父さんには届きません。


車の中で脅しすぎたのか、お父さんの目はまったくと言っていいほどに光をたたえていませんでした。まさにリビングデッド。
ため息混じりに「ケイスケさ〜ん・・・この寂しい姿をサイトで取り上げてくださいねぇ・・・」と早くも敗北宣言。
嫌だよ、オレはお前のハッスルぶりが空回りした結果、会場をドン引きさせる様を書きてぇんだよ。

そんな事は思ってもお首にも出さず、「本番になったらフォローしてやるからさ!」と励まし、いよいよ会場内へ。



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看板を頼りに歩くと、廊下の先で若い男性と女性がテーブルを広げて待っていました。
机の上には数字の書かれた名札が無数に並んでいました。まずは名前の確認をし、参加料の5,000円を支払います。

あー高いなぁ、と思いましたが、ホスト曰く相場はこんなもんらしいです。
相場では男性が5,000円程度。
女性は無料、または500円程度。
もてない男性に対して、言い方は悪いかもしれませんが、「餌」となると女性の数を保つためこのような料金設定になっているようです。


これが、男性参加者の職業が医者、弁護士と限定されてくれば立場と料金が逆転することになります。群馬ではあまりこのようなパーティーは開かれないようですけども。

まぁオレ達のような有象無象では、それ相応の料金を支払うことによって初めて入場が許されるのです。

そして、この料金が高いか安いかはその後の出来如何となります。






料金を支払うとすぐ隣の部屋へと通されました。


薄暗く狭い部屋にはみっちりと椅子が並べられており、これからお見合いをするような雰囲気ではまったくありません。席とかすんごい近い。うかつに伸びなんかしようもんなら、触ったらいけないとこ触って強制退場くらってしまうくらい近い。いやいや5,000円返せ。


ちょっと華やかなイメージがあっただけに何だかとっても不安になりましたが、まさかいくら何でもこれはないだろ?と。
【お見合い】のうえに【パーティー】なわけですよね。日本的な【お見合い】のうえにアメリカンな響きの【パーティー】なわけですよね。
でも、この会場にはそんな雰囲気ひとかけらもありません。
ホント、何かのセミナーとか始まって壺とか買わされてもおかしくない。その代金が入場料の5,000円だったら納得できる。そう、オレのお見合いパーティーがこんなところで収まる器であるはずがない。

そんなわけで待ち合わせ室か何かと思いこむこととし、適当な席につきました。




時間は開始時刻10分前といったところでしょうか。
そうこうするうちに他の参加者達が部屋にぞろぞろと入ってきました。今のところ男性しかいませんが、胸に番号札をつけた人々を見ていると何だかパーティーっぽくなってきました。アメリカンな感じがしてきました、何となく。



そしてさらに開始時間が近づくにつれ、狭い待合室にも人が増えてまいりました。






そして、時刻は運命の夜7時を迎えます。

この狭い部屋には20名ほどの人々が集まっていました。




ここで一つだけ文句言わせてください。
男しかいないってどいういうことだ。


男同士でお見合いはさせる気ですか。





今なら声を大にして言える。金返せ。


20名の男性が薄暗い部屋に籠もるパーティー。いやもう黒ミサとか思われてもしかたない。そんな雰囲気。



とその時、奇跡が起きました。


ドアが開き、一人の女性が顔を覗かせたのです。





きた!ようやく女がきた!一筋の光明が差したかのような思いに包まれたのはオレだけではないはず。


その証にドア付近に集中する40個の眼。


20の視線に晒された女性はゆっくりと顔を引っ込め、静かにドアを閉めました。そら、ひくわ。みんな一斉に見るなよ!




そして再度会場に残された20人の男達。

もう今にも黒ミサとか始まりそう。


おい誰か、こういうマスク持ってきてねぇか?

まだパーティー始まってもいないのに、いよいよ持って場は煮詰まってきました。


もう本気で「金返してもらって帰ろうぜ」と話をしていると、連れてきてくれたホストはすごくバツが悪そうな顔をしてました。やーやー、気にすんなよ。お前が悪いわけじゃないんだから。


「ちょっと外に出ましょうか。」


そう言うと、ホストはお詫びにとでも言いたげに缶コーヒーを奢ってくれました。そして「まさかこんなことになるとは・・・」と、ホストは二の句も告げられずに静かにコーヒーをすすりました。

オレもこれからのことを考えると気が重くなりました。あのシチュエーションは絶対にありえません。こんなところで早々にオチをつけたくないのはホストもタモツジャージも同じでしょう。「男同士でお見合いしてきました」とか口が裂けても言えないし、指が折れても文章にできやしない。






そして、10分ほどの時間を潰し、足取り重く部屋に戻るとそこには奇跡が待っていました。


部屋の中から香るかすかな香水の匂い。
そこには確かに女性の気配がしました。

ドアを開けると10名ほどの女性達が目に入りました。
このときほど女性の存在をありがたく感じることはありませんでした。


ありがとう、そこに居てくれて。


ありがとう、生まれてきてくれてありがとう。



にわかに待合室は湧いていました。
男女比からして倍率2倍という悪条件ながらも、ゼロからのスタートだった男性陣にとって10という数字はあまりにも偉大過ぎたのです。


これでパーティーの準備は整いました。さぁいつでも始まれ!時間過ぎてっぞ!



「さぁ、みなさんお待たせしました!時間も少々過ぎております!そろそろここでパーティーを開始させていただきます!」

頃合いを見計らって、受付にいた男性が司会として入場してきました。


いよいよ会場に入場か?バトルロワイヤルの始まりか?と思った矢先、またしてもステキな奇跡が起きました。









「さぁ、それではみなさんにはここでお見合いをしていただくわけですけども〜!!」















会場、この部屋だった。

【お見合い】と【パーティー】という単語からほど遠い待合室だと思っていたこの部屋が会場だった。







つづく